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Posted on 2016年10月27日 | No Comments

舞台は、2081年の京都。情報庁の審議官 御野・連レルが、女遊びのあとの遅い朝から、情報庁へ出勤する様子を通して、この世界/システムを説明しながら、物語がはじまる。

都市はおろか、山や森の木々にまで、そこらじゅうに巡らされた、情報材により、あらゆるものがネットワーク化された世界。脳にインプラントされた電子葉により、パソコンやスマートフォンなどの端末無しに、メッセージのやりとりや情報の検索を行うことができるようになった人々。ここで描かれる超情報化社会は、間違いなく現在のインターネットの延長線上にある世界だ。しかし、電子葉による検索を使いこなし、調べるという意識なく、パンダの学名を答え、千手観音の眷属である二十八部衆像の名前を列挙する、そんなこの物語の世界は、知るということの意味が、すでに我々の感覚とは違うのだ。

ビッグデータや人工知能、検索というネットワーク世界のキーワードをさらに拡張し、世界にあふれる大量の情報がどのように利用されるべきなのか。より高度に、高速に、情報を処理できる能力を獲得した人々は、知るという行為を極めることで、今後どうなるのか。個人が持つ情報へのアクセスは、どのように線引きされ、管理されるべきなのか。このような倫理的なテーマを扱っている本書は、今のネットワーク世界とどこまでも地続きである。

御野・連レルの回想から、情報材や電子葉の開発者である道終・常イチこと、先生との関係が語られる。先生が書いたコードの謎を解明することで、行方不明となっていた先生と再会するのだが、それは先生との別れであり、14歳の少女 知ルとの出会いでもあった。ここから物語が大きく動き出す――つまりは、ボーイミーツガールの法則。

知ルが抱えている秘密、その目的もわからぬままに、御野・連レルは京都のまちを連れまわされる。とある組織から狙われることになった知ルは、機密情報課とのハッキング対決を挟みつつも、連レルとの逃避行は、まるでデートのよう。あげく、京都御所にておいて、連レルはドレスを着た知ルと優雅に踊りながら、特殊部隊の銃撃をすべて避けるのだ。ビジュアル重視のこの非現実的な演出には、理屈づけがあってもやはり苦笑い。ただしかし、このような過剰性もまた、物語の魅力の一部となっている。

クライマックスは、電子葉を超えた量子葉をつけたもの同士の対決だ。といっても、ただ問答を繰り返すだけ、というある意味で非常に地味な展開。凡人の理解を超えた、人智を超えた、量子コンピュータによってさらに拡張された脳を持つ者となった、そんな天才をどう描くのか、という作者なりの回答だ。この問答がいきつく先は何なのか、知ルの目的、先生の計画とは――オチは読んでのお楽しみ。

現代の延長線上にあるだろう未来の世界を、SFとしてしっかりと描写しながら、派手なガジェットに頼らず、アクションに軸を置かず、軽いキャラクターや読みやすい語り口ながらも、じっくり描きつつ読ませる一冊。

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