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複成王子

Posted on 2016年7月19日 | No Comments

遠未来の物語。海王星軌道上にあるジレンマの監獄から脱獄をとげたのは、量子怪盗 ジャン・ル・フランブール。彼を救出したのは、有翼の美少女 ミエリと、高度な知性を持つ宇宙船 ペルホネンだった。

脱獄からはじまった前作では、火星の都市 ウブリエットにて、ツアディークやゾク、青年探偵にゴーゴリ攫いたちとの冒険の末に、過去の記憶と、謎の箱を入手したジャン。続編となる本作では、謎の箱に導かれて、地球へと辿りつく。

この地球、もちろんただの地球ではなく、アラビアンナイト的世界観の舞台となっている。千夜一夜物語をベースに、登場する聖霊 ジンは携帯壺に入っていて、人に使役する存在であったり、人が住みつかない砂漠にはワイルドコードという、人を蝕むウイルスのようなものがいたり、人間はコロニー跡に住みついていたり、超技術による空飛ぶ絨毯が登場したり……

このアラビアンナイト的世界観を、理解するのがまた難解。あわせて、ジャンとミエリの物語と、アラビアンナイト的な地球を舞台とした物語が、それぞれの時間軸も異なるなかで、章が交互に繰り替えされるので、読みの難易度は前作以上か。

相変わらずのスピード感で物語は展開し、超テクノロジーのガジェットやら、様々な設定に超未来の世界観、造語の波また波が押し寄せて、序盤は物語についていくのもやっと。

そんな情報の海に溺れながらも、だんだんと読み進めることで、おぼろげながらも物語がみえてくるのが面白い。もともと難解なSFとはいえ、かなりの置いてけぼり感のためか、巻末には訳者による丁寧な用語解説もある。訳者すら読み切れていない世界観、設定があることがわかり、それもまた面白い。

とはいえ、新しい言葉に溺れるのも、それはそれで心地がよいもの。訳者の苦労が垣間見える翻訳された言葉、日本語ならではの漢字とルビ、そして文脈と、そこから想起されるイマジネーションを総動員して、ガジェットのひとつひとつ、壮大な世界観、これらを統合した物語にひたることができる。そういうマゾヒスティックな読みも、またよい。

前作はある意味で、ジャンの記憶を辿る物語であったが、今作はミエリの過去を知る物語といってもよい。本書のクライマックス、いよいよこれまでかと思われたところで、ミエリが繰り広げる超絶大大大混戦(スーパーバトルとルビ)からが、なんとも爽快で痛快。

いよいよ三部作の最終作となる続編も、また待ち遠しい。

複成王子 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)



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