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夢の守り人

Posted on 2016年5月26日 | No Comments

上橋菜穂子による異世界ファンタジー小説、守り人シリーズの第三作となるのが本書。

本シリーズのファンならば、醜い老婆とされる呪術師トロガイの過去、それも娘時代の恋話が語られるのが、本書の一番の魅力だろう。恋話とはいえ、それは人生に鬱屈とした末の、ファンタジックな幻想世界のお話。そして、この過去の恋話が、物語のそもそもの発端、事件の種となっているのが面白い。

事件というのは、皇子を亡くしたばかりの一ノ妃、タンダの姪カヤ、そしてチャグムらが、夢にとらわれるかのように、何日も眠ったまま目覚めなくなってしまったこと。謎の奇病でも、誰かから受けた呪いでもない。原因不明ながら、魂が身体から離れてしまっているということで、前作では活躍の無かった呪術師たち、トロガイとその弟子タンダが中心となって動きまわる。

トロガイの助言を聞かずに、タンダが魂呼ばいという呪術を試みるも、逆に夢の世界に囚われてしまい、鬼神と化したり、チャグムがバルサに会いたいがために、わざわざ現場に出張ってきたり、物語のキーとなる木霊の想い人 たぐいまれな歌い手ユグノに、バルサがご都合主義的に出会ったり、花番だの種だの異界の花だの宿主などが、抽象的にわかりにくかったり……

結局のところ、一ノ妃もカヤもチャグムも、現実を受け入れて生きていくことを選び、また一方で、トロガイやタンダは、自分らしい生き方のために世俗から離れて呪術師となる道を選ぶ。幼いころから常に現実と向き合い、自分を知り、迷わず、夢に逃げず生きてきた、そんなバルサの存在がチャグムに前を向かせる力になったのだろう。

夢の守り人 (新潮文庫)




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