> | > 精霊の守り人

精霊の守り人

Posted on 2016年3月19日 | No Comments

上橋菜穂子による異世界ファンタジー小説、守り人シリーズの第一作となるのが本書。少年少女向け、いわゆる児童書でありながら、主人公は30歳の女用心棒と、異色の設定。というわけで、出版にあたってはこの設定に抵抗もあったようだが、結果的には幅広い年齢層から、この物語が受け入れられることになったのだろう。

短槍使いの女用心棒 バルサが、川に流された新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを救うところから、物語がはじまる。無駄のない展開と必要で十分な描写が、やたら饒舌なキャラクターがバタバタするだけの、そんな凡百の小説に毒されているからだろうか、あたりまえなのに心地よい。

三十路の女用心棒と皇子、二人を取り巻くのは、先住民側の人物として、老呪術師トロガイと、バルサの幼馴染で呪術師見習いのタンダ、皇国側の人物として星読博士のシュガ、ガカイ、聖導師ヒビ・トナン、帝直属の暗殺グループで狩人と呼ばれるモン、ジン、ゼン、ユン、タガ、スンたちだ。

この世(サグ)と重なって存在する異世界(ナユグ)の水の精霊ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の卵を産みつけられ、卵喰いのラルンガに狙われる皇子 チャグムを、バルサたちがどう守るのかが物語の核。新ヨゴ皇国の立国にまつわる伝説の英雄が倒したという魔物が、先住民の神話に残る異世界と天の恵みにつながっており、歴史はあくまでも一方から作られたものであり、これまでの価値観を逆さにする感覚がよい。

本書において、先住民、被差別民、庶民など、これらの人々を丁寧に生き生きと描けているのは、著者の上橋菜穂子が、大学院で文化人類学を学び、中央アジアの民俗について見聞があったからであろう。そのことが、この物語の深みをさらに増している。

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)




Leave a Reply

量子的跳躍 quantum leap. Powered by Blogger.