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墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活

Posted on 2016年1月16日 | No Comments

『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』というタイトルと、赤子が幽霊に育てられるというあらすじから、すぐにゲゲゲの鬼太郎を想像してしまったのだが――原題は、『The Graveyard Book』といい、著者あとがきによるとラドヤード・キップリングの『ジャングル・ブック』(映画ではなく原作)に影響を受けたということ。つまり、狼が育てた少年モウグリと、幽霊が育てた少年ボッド、というわけだ。

本書は、アメリカとイギリスの児童文学賞であるニューベリー賞とカーネギー賞を受賞し、さらにはSF・ファンタジー・ホラーを対象分野とするヒューゴー賞、ローカス賞(ヤングアダルト部門)を受賞するなど、ニール・ゲイマンの最高傑作のひとつといってもよい作品。

物語は、ある夜、墓場の近くにある家で、一家が惨殺されるところから始まる。たったひとり、生き残った赤ん坊が迷い込んだのは、真夜中の墓地。その赤ん坊の養父母となってくれたオーエンス夫妻、後見人として赤ん坊の教育係を務めるサイラスなど、墓地の幽霊たちの愛情溢れる、奇妙な子育てがはじまった。

ダークファンタジーの基調ではあるが、オープニングの惨殺シーンから想像される、陰惨で重々しい雰囲気は感じられない。少し不気味な愛すべき幽霊たちの姿から、読み進めるにしたがい自然と、ティム・バートン風の映像が脳内で再生される。

グールたちに囚われてしまう異世界での冒険譚や、人間の少女スカーレットとの出会いと別れ、学校での生活といじめっ子との対決、生者と死者が交わる幻想的で不思議な舞踏会、ツンデレ魔女っ子幽霊ライザ・ヘムストックとのほろ苦い関係などなど、いくつかのエピソードが、ボッドの成長とあわせ綴られている。

養父母オーエンス夫妻とボッドとのエピソードが薄く、その部分だけは感情移入しづらいのだが、このボリュームでこれだけの物語世界を詰め込み、しっかりと構築する、ニール・ゲイマンの素晴らしさよ。

終盤、スカーレットと再会するのだが、これをきっかけに一気に、物語はクライマックスを迎える。一家惨殺事件の真相が明らかになるのだが……ビタースイートなエンディングが心地よく、少年の成長物語として、大人も子供も楽しむことができる一流のファンタジーだ。

印象に残ったのは、死ぬことになんの恐怖も感じていないボッドに対して、サイラスが諭すシーンだ。幽霊(正確にはサイラスは生者でも死者でもない存在なのだが)に語らせることで、生が持っている可能性と希望の意味を、改めて考えることができた。

「復讐とは、冷めてから食すのがもっとも美味な料理」ネヘミア・トロットはいった。

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