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ヨハネスブルグの天使たち

Posted on 2015年10月19日 | No Comments

初音ミクをモチーフにしたという、元々は歌を歌うために量産された少女型ロボット・DX9を物語の軸に、近未来の南アフリカからニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、そして東京を舞台とする連作5編。

内戦続く南アフリカ、見捨てられた耐久試験場で落下テストを繰り返す大量のロボット・DX9が、何とも印象的で詩的な表題作『ヨハネスブルグの天使たち』。

断片的な証言が積み重なりながら、ロボット・DX9を使った9.11の再現実験が行われる、落下するロボット・DX9が、どこか悪夢をみているようで幻想的な『ロワーサイドの幽霊たち』。

終わりなき内戦が続くアフガニスタン。顔を削がれ、喉をつぶされ、黙々とプログラムされた殺戮を続ける、兵器としてのロボット・DX9たち。危険地域を移動していた日本人青年と、護衛のため雇われた米兵は、不可解な殺人事件に遭遇する『ジャイララバードの兵士たち』。

無政府状態、終わらない民族紛争、対立する二つの集団、画一的な伝統と多様性を教義とする新しい宗教、ロボット・DX9に人格をコピーし、自爆テロへと向かう人たち。イエメンと二人の日本人を描いた『ハドラマウトの道化たち』。

東京にあって、取り残された場所=荒廃した団地で生きる子どもたち。自死を繰り返すように、屋上から無意味に落ち続けるロボット・DX9たち。それを止めようとする少年少女と、仮想の自死を繰り返す大人たち。ようやく歌う少女型ロボット・DX9が登場し、悲劇と喜劇、絶望と希望が併存する抒情的な一編『北東京の子どもたち』。

国の自死者は年間で四万人。以前、隆一が言っていたことがある。悲劇と呼ぶには大きすぎ、統計と呼ぶには小さすぎる数字だと。

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)



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