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贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに

Posted on 2015年3月10日 | No Comments

瀬名秀明による、SFを中心にしたアンソロジー。SFといっても、バリバリなハードないわゆるSFではなくて、藤子・F・不二雄曰く「SF=すこし不思議」系の物語が集められている。小説だけでなく漫画も収録(あとがきでは、F先生の作品も収録したかったと漏らしていた)。瀬名秀明のフィルターにかかった、珠玉の物語集だ。

印象深かったのは、本書の冒頭を飾る山川方夫の『夏の葬列』だ。夏の夢、それも白昼夢のような薄らぼんやりした印象であって、ひねった展開による心の隙間を突く落差が、残酷な結末を導く。こんな乾いた張り詰めた悪夢は、なんとも辛い。聞こえるはずもない、蝉の声が耳の奥で響き渡るなか、永遠に溶けない氷に閉じ込められるような狂気を感じる。男はこの夏の夢を、何度も繰り返し見ているのではないか、と思うと空恐ろしくなる。

もう一編をあげるとすると、平山夢明の『托卵』が素晴らしかった。断食芸人+不眠芸人のお話。ケレン味たっぷりながらも、淡々とした灰色の世界が、物語の小道具が猟奇的であればこそ、より美しく感じる。平山夢明の作品は、はじめて読んだのだが、他の作品も読んでみたいと思った。

これ以外にも、星新一、アーサー・C・クラーク、江戸川乱歩といった超大御所から、いとうせいこうなどの変化球まで、Wonderの名に恥じないバラエティに飛んだセレクトになっている。

贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに (光文社文庫)




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