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山の遭難―あなたの山登りは大丈夫か

Posted on 2015年2月17日 | No Comments

日本における登山の歴史からはじまり、それについてまわる遭難の歴史、その中身が時代によって変化していることをわかりやすく説明しつつ、山におけるトータルなリスクマネジメントを考える一冊。

登山と一口で云っても、日本におけるごく初期の登山は、富裕層による功名心をベースとした冒険的要素が高い登山で、その後、日本登山隊マナスル登頂などを経て、現在の一般庶民による誰でも楽しむことができるレジャーとしての登山と、時代によりそのスタイルは移り変わってきた。

ツアー登山についての言及もある。ツアー登山については、これまでも内在する危険性について問題視されてきたし、事故や遭難も多々あったのだが、2009年の北海道大雪山系トムラウシ山における大量遭難死亡事故により、再びその危険性が話題となった。遭難事故が起きるたびに、ツアー登山の問題が顕在化するのだが、しばらくするとまた忘れ去られる。参加者や運営側の意識の問題だけではなく、事故を繰り返さないためには、根本的な規制が必要になるのだろうか。

本書の著者である羽根田治は、これまで多くの遭難の事例を著書としてまとめてきた。『ドキュメント 気象遭難』『ドキュメント 道迷い遭難』『ドキュメント 滑落遭難』などのドキュメントシリーズは、それぞれ原因別に遭難の事例を、詳細な取材によってまとめたレポートである。如何に、何故に、遭難が起きるのかが、白日の下に晒される。あまりにリアルすぎるドキュメンタリーレポートは、ゾクゾクするくらい面白く、そして遭難の恐怖を追体験できてしまうので、なんとも恐ろしいのだ。本書では、そのドキュメントシリーズ執筆で得た知識や経験が、エキスとして注入されている。

これまで羽根田治氏が積み重ねてきた、個別のケーススタディである遭難ドキュメントから、いわゆる「遭難事故」を一般化し、問題意識をより広くより高め、わかりやすくまとめられた一冊である。遭難ドキュメントは、ある意味でエンタメとして、本書はスタディとして読むことができる。

山の遭難―あなたの山登りは大丈夫か (平凡社新書)




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