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ヤバい社会学

Posted on 2015年1月27日 | No Comments

シカゴの大学院で社会学を学ぶ一人の学生ヴェンカテッシュが、マンション住人の貧困を調査するために、アメリカ最悪のスラムのひとつである、シカゴのロバート・テイラー・ホームズに、ノコノコとでかけるところから物語は始まる。といっても、これはフィクションではなく、社会学ノンフィクションだ。生々しくてリアルすぎて、まるで映画のような体験記となっている。

タイトルにある社会学という言葉に釣られて読んでみたが、本書は社会学というよりも、著者が社会学の世界、エスノグラフィーの世界に入り込んでいったきっかけを描いている。ルポタージュに近いものだ。

著者であるヴェンカテッシュが、調査を通して直接的に間接的に知り合っていくのは、ギャング・リーダー、ヤクの売人、ヤク中、ホームレス、売春婦、ポン引き、活動家、警官、自治会長、役人など、多彩な人々。一般的な常識では想像ができない、ギャングと住民の特殊な共生関係や、通報しても警察も救急車も来ないという、公権力の及ばない世界などが、リアルに垣間見えてくる。

そういう「ヤバい」世界を知ること、垣間見ることができるのが、本書の面白いところではある。しかし、本書の真の魅力は、ヴェンカテッシュとギャングのリーダーJTとの関係性、バランスを描いている部分だ。

スラムに生まれ育ちながらも、大学を出て一旦は就職したが、ギャングのリーダーとしてスラムに戻って来たJT。ヴェンカテッシュは、中流家庭の出身で、社会学を学ぶ怖いもの知らずの大学院生。ふたりの不思議な関係性というか友情が、なんとも爽やかで魅力的なのだ。青春小説として読むことも可。

社会学者としてエスノグラファーとして、対象に入れ込みすぎることなく、客観的に一定の距離を取ろうとする著者ヴェンカテッシュ。しかし、スラムはそんな半端な距離感を許してはくれない。常に「おまえはどちら側なんだ?」と迫ってくる。本書の後半で、スラムを調査する(スラムをネタにして研究し、博士論文をでっちあげる)ってことも「シノギ人」(スラムに巣食ってる連中)と同じじゃないか、とホームレスの一人から示唆されるのが興味深い。

ファックの使い方がよくわかる一冊。

ヤバい社会学




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