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ソーシャル・キャピタル入門 孤立から絆へ

Posted on 2012年8月7日 | No Comments

人々の間の協調的な行動を促す「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク(絆)」をソーシャル・キャピタル、日本語で社会関係資本と呼んでいる。

入門書ということで、社会関係資本とは何か?にはじまり、それは何の役に立つのか?それは何がかたちづくるのか?どう測るのか?といった基本的なところから、いくつかの事例や統計資料をはさみつつ、社会関係資本を壊す存在=格差について述べるとともに、社会関係資本のダークサイドとして、村八分や格差を助長する社会関係資本の偏在について書かれている。

震災中そして震災後、人々がテレビのインタビューやインターネット上などで発信した言葉には、感動が満ちあふれている。人々は他人の不幸に乗じたり、我先に行動するようなことは決してしなかった。避難所でも、駅でも、計画停電中でも、本当に忍耐強く、互いに譲り合い整然と行動した。それどころか、自分を犠牲にしてでも弱い者を救った。二〇〇五年八月のハリケーン「カトリーナ」のさいアメリカで見られたような、商店を略奪するような行為も皆無に近かった。

これによれば、「地域の侵入盗が多いほど、個人が持つ地域内の友人の数が多くなる一方で、それ以外の単なる知人の数は少なくなるということが示された。つまり、犯罪が多いほど密な人間関係が増加する一方で、開放的な人づきあいは減少するということが示されている」。
つまり、泥棒が多いと友人が増えるが、知人は減る。ただ、泥棒の多い地域内に限ってみると一般的信頼の高い人ほど知人数が多い。一方、泥棒の少ない地域では、一般的信頼の水準に関係なく知人数は一定であるから、犯罪の多い地域ほど、一般的信頼の役割が犯罪抑止に重要であるという。これは「犯罪が多い地域では、人はよく知らない他者とのつながりを放棄し、仲間内だけのつきあいに限定するようになることが予測される」ためである。

この「助け合い起こし 須坂市地域福祉活動計画」の策定後、毎年「助け合い起こしによるまちづくり推進大会」が開催され、二〇一〇年二月に第四回大会が開催された。この大会では、人に助けを求めること自体が勇気を要することであるという認識から、助けた人だけではなく助けられた人を表彰する「助けられ大賞」を授与している。

しかし、最も有効な反論は、市場を通じた議論に基づく反論ではなく、格差拡大に伴って生じる外部不経済があまりにも大きいというものだ。特に、格差拡大は外部性を伴った社会の信頼・規範・ネットワークである社会関係資本を壊すから望ましくないという議論である。具体的には、「格差の拡大」が「信頼・規範・ネットワークである社会関係資本」を壊し、それが人々の「健康水準」や「教育」に悪影響を及ぼすというものであり、筆者はこの立場を取っている。

つまり「きずな」の重視を標榜するということは、格差に伴う不平等を是正するということだ。特に、教育、医療に関してはやはり政府の責任で不平等を是正する。そのためには、富裕層にそれなりの負担をしてもらう。今まで個人の所得税は累進税率緩和一本槍であったが、「きずな」を重視するという政策は、結局のところ、個人所得の累進税率の見直しを含めた富裕層の負担増を求める格差是正策、つまり、所得再分配策の見直しを意味しているのではないだろうか。

あわせて、小田亮「利他学」、レベッカ・ソルニット「災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか」を読んでおきたい。

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